Victorialand
- アーティスト: Cocteau Twins
- 出版社/メーカー: 4ad / Ada
- 発売日: 2007/04/09
- メディア: CD
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曲目
原題
Victorialand
解説
概要
1986年4月に発売されたアルバム第4作目。
本作はRobinとLizの名前のみクレジットされていて、Simonが参加していない。
This Motal Coilなど他の仕事にかかわっていたため、というのがwikipediaなどの話。
日本コロムビア盤CDのライナーの方では、ちょっと二人でEPでも作ろうか、というのが、作ってみたらLPに育っていたとある。
ともかくバンドの3人の関係は良好で、Simonは次の作品ですぐにバンドに戻っている。
なお、リリース時はアルバムでありながら回転数が45rpm指定だったという話で、それは12インチEPと同じで入ってる曲の数が違うだけということになる。やはり本作はEPとLPの中間のような立ち位置にいる。
このアルバムはコンセプトが「極地」で統一されていて、同時期のEPの"Tiny Dynamine"と"Echoes In a Shallow Bay"がチョウやガの関連のもので統一されているのと通じるものがある。レコードを統一コンセプトで作ってみようというのが当時のバンドの考えだったのかもしれない。
アルバムのタイトルは南極の地名、Victoria Landからと考えられている。以下の画像はwikipediaから。
http://en.wikipedia.org/wiki/Victoria_land
各曲のタイトル、音の雰囲気、そしておそらく歌詞も、南極および北極、そしてそれに近い極地をイメージしたものとなっていると推測される。
音作りとしては、他では使われているリズムマシーンを使っていないところがまず大きい特徴。そしてSimonがいないこともあってかベースの使用も限定的。一方ではサックスやタブラという普段バンドが使わない楽器が使われている。
ヴォーカルは"Treasure"からまた進歩している。Elizabethは声楽の訓練を受けたのではないかと思う程。
クレジットを見ると録音スタジオについては言及されていない。September Sound Studioの設立はまだ先のことだったはずなので、録音スタジオは不明。エンジニアも誰とは書いていない。これはRobinが自分でやっているのかもしれない。
サックスとタブラについては下記のようなクレジットがある。
Richard Thomas Plays Saxophone and Tablas courtesy of Dif Juz
タブラは「インド音楽の,大小 2 個の手打ちの組太鼓」(リーダース英和辞典)とのこと。
小嶋さちほ氏の日本コロムビア盤CDのライナーによると以下のようにある。
このアルバムは、エリザベスとロビンの2人で作られており、 ディフ・ジュズのリチャード・トーマスが、サックスとタブラで参加 している。ディフ・ジュズは、やはり4ADのアーティストで、ロビンが プロデュースをしたり、エリザベスがヴォイスで彼らのレコードにも 参加したりと、コクトー・ツインズには、もともと、かなり近い関係 にあった。
詳しい人に教えていただいたところによると、Richard ThomasはDif Juzのドラマーで、その後Jesus & Merry Chainでも叩いていたとか。彼は"The Moon And The Melodies"でもサックスとドラムを演奏しているという。
ジャケットのアートワークは23 Envelope。写真撮影も含め何もかもアナログでやっていた時代にどうやってこういうアートワークができるのかいたって不思議。Photoshopの発売もまだである。
各曲紹介
'Lazy Calm'
ポロロン、とRobinのギターから始まる美しい曲。イントロが3分もあるのは表題通りけだるいが、よくよく耳を傾けるとRichard Thomasのソプラノ・サックスが心地よい。
3分後にいよいよLizのヴォーカルが入る。幾重にも音を重ねた声は柔らかく心地いい。しかし歌詞はほとんど聞き取り不能。
ベースが低くリズムを刻んでいるのもいい感じ。
'Fluffy Tufts'
直訳すると綿毛のふさ。尾瀬ヶ原など高地や寒冷地の湿原に生えるワタスゲのような植物をイメージしているのだと思う。
ピアノが控えめに使われていて、ベースは入っていない。
'Throughout the Dark Months of April And May'
wikipediaの本作の項目によると、4月、5月が南極での冬の始まりとある。
三拍子の曲で、アコースティックギターを重ねたところにLizのヴォーカルを乗せているように聞こえる。
'Whales Tails'
Robinのギターに切々とLizの声がからむ。弾き語りで鯨たちの悲しいストーリーを歌っているのかと想像してしまう。しかし本当にストーリーがあるのかどうかは多分Liz以外誰にも分からない。
この曲のギターはエフェクトをかけて使っている。一方ベースは入っていない模様。
'Oomingmak'
オフィシャルサイトの用語集によると、グリーンランドのイヌイットの言葉でジャコウウシのこと。
Robinがアコースティックギター1本で弾いていて、となりでLizが歌っているような感じのシンプルな構成(一部Lizの声が二重に重なっている)。
ギターは弾けないのでよく分からないが、確か同時にこれぐらいの音が出せたはず。
追記:コメントでギターは数本重ねてあるとのご指摘を受けました。
CDシングルのBox Setの10枚目にこの曲のギター部分だけを収録したトラックがある。
'Little Spacey'
ちょっとこの曲のタイトルだけはどう極地と関係があるのか分からなかった。
南極の氷は雪が圧縮されて固まったものなので気泡があり、水に入れて溶かすとそれが弾ける音がする。もしかしたらその気泡が'little spacey'なのだろうか。
管楽器の音が聞こえる。サックスにちょっと聞こえないのだけど、他の楽器のクレジットもないのでやっぱりサックスかもしれない。
これも三拍子。ベースは使われていないようだ。
'Feet-Like Fins'
直訳だと脚のような鰭、となるか。
タブラはこの曲で使われている。ウッドベースが入っているような気がするが単にギターの低音かもしれない。
'How to Bring a Blush to the Snow'
関東にいると雪の日は年に数日しかない。それで、たまに雪が降ると思い出してこの曲をかけてみる。
音もなく降り積む雪に切々と歌い上げるLizの声がとてもよく合う。スコットランドに降る雪はどんなものだろうか。
アコースティックギターの音を重ねてあってベースは使われていない感じ。
雪を赤くする方法、といった意味のタイトルは英語のwikipediaで、'Feet-Like Fins'ともどもペンギンに関するものではないかと推測されている。
とすると海岸から雛が待つ巣まで長く歩いて移動するあいだに、岩場を登るのに失敗して怪我をし、血を流しながら歩く親ペンギンの痛々しい姿が浮かんでくる。旅の途中で命を落とす者もいる。
ペンギンが胎生なら子供は水中で産めばよくこんな苦労はいらないのだが。残念ながら爬虫類で胎生に移行できたのは単弓類(哺乳類に至る系統)と有鱗目(マムシとか)のみで、特に石灰質の殻をもった卵を産むカメ、ワニ、翼竜、恐竜、そして鳥の系統は胎生を獲得したものがいない。
進化の歴史がもたらした制約の中で、南極という厳しい自然条件に繁殖の場を見つけ、なんとか命をつないでゆく海を飛ぶ鳥の歌、と考えると、それはそれでこの曲は胸に訴えるものがある。
シロクマが狩りをしても雪が赤く染まるので、曲とちょっとイメージが合わないが、その線もあるかもしれない。
'The Thinner the Air'
wikipediaによると南極大陸のほとんどは標高3000m以上なので空気が薄いはず、とのこと。
この曲もサックスが使われている。ピアノも使われている。