Milk & Kisses
- アーティスト: Cocteau Twins
- 出版社/メーカー: Universal UK
- 発売日: 2006/07/11
- メディア: CD
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曲目
原題
Milk & Kisses
- Violaine
- Serpentskirt
- Tishbite
- Half-Gifts
- Calfskin Smack
- Rilkean Heart
- Ups
- Eperdu
- Treasure Hiding
- Seekers Who Are lovers
解説
概要
1996年3月に発表されたアルバム第8作であり、Cocteau Twins最後のアルバム。
ジャケットの意匠の活字に歌詞の一部が用いられていて、Cocteaw Twinsの側から歌詞(の一部だが)が明らかにされたのは、レコードとしては"Garlands"の初版のLP以来のことになる(TwinlightsのPVにも歌詞が出てくる)。
ただし以下はどの曲のものか不明。
being here new in the moment
please please let that be th plaece
where I am
この一文はLizが当時懇意だったJeff Buckley('97年逝去)に宛てたものと言われている(2ch掲示板のCocteau Twinsスレッドより)。
milk and kisses for the first man
my old man
love and a thousandtold rose for Buckleymy Rilkean Hearted friend
日本盤は"Tishbite"の黄色い方のシングル(限定盤)から2曲が追加されている。また、アジア盤というか香港盤では'Serpentskirt'にFaye Wongが参加している(絶版、CDの番号は[7314 5323182 5])。
日本盤は折り込みのジャケットの他に8ページの冊子がついていて、伊藤なつみ氏の解説が書かれている。また、中央のカラーの見開きにはAndrew Collins氏の解説が書かれている(ただし英語)。
作品の出来は目を見張るものがある。特に最初と最後の曲がテンション高くていい。作品の音が作り上げる世界観もスケールが大きく、何度聞いても色あせない。
様々な情報から、どうもこの作品はかなり煮詰まった状況で作られたのではないかという気がする。本作の前にRobinとLizの関係は破局しているし(結婚はしなかったので離婚ではない)、次の作品を制作中になんとバンドは解散してしまった。それを考えると、この作品がこのように見事な完成度をもっていることに深い感慨を覚える。
各曲紹介
'Violaine'
最初のベースに続いてノイジーなギターが加わり、Lizの忍び寄るようなヴォーカルが乗る。独特のスピード感と緊張感を持つ曲。アルバムの最初を飾るのにふさわしい。
Violaineとは用語集によるとフランス語の女性の名前という。
ジャケットの折り返しの中にある以下の言葉がこの曲の歌詞だとのこと。これを延々繰り返しているらしい。
ectefamof oitavito fles eth yll anif snoitatmil noitae chus seccus namukadnu itenemavom lacigolocysp
意味不明。
これは英語を逆に並べ(backword)、さらに綴りを変形させたものだと推測されている。実際に綴りを逆にしてみると;
psycological movameneti undakuman succes suhc eation limtations fina lly hte self otivatio fomafetce
変形された英語の元の形は、Michael Borum氏によると;
psychological movement ... success... such limitations... finally the self-motivation...
...の部分は不明箇所。
98年8月23日にMLに投稿されたMichael Borum氏の記事によると、氏はLiz本人に確認した上で、「この歌全体はナンセンス(で/または) 言葉はバックワードか、おそらく他の言語からの言葉のスクラップで歌われていると、私はすっかり納得している」と言っている(拙訳)。
要するにワケが分からないように作られた詞だということ。まさにLiz語。
'Serpentskirt'
用語集によると、「アステカのヘビのスカートをはいた女神、コアトリクエを意味する」とある。
詳しくはこちら。
'Tishbite'
用語集によると、「聖書に登場するティシュベ人のこと。 もっとも有名なティシュベ人はエリヤ(列王記上参照)」。
wikipediaによると;
日本語版wikipediaにはエリヤの項がある。
ジャケットの折り返しの中にある以下の言葉は、この曲の中に出てくるようだ。
this mountain of pleasure
I want to get lost in it
until I don't know where you end and I begin
until I just carry it in me
'Half-Gifts'
"Twinlights"に比べてアルバムの収録曲は急にチープになったので驚く。
どうなってるのだろうとよく聞くと、目立つ打ち込みの伴奏がチープなので気になるようだ。合わせて幾重か乗せてあるギターはいい感じ。ベースはシンプルでsimonのとは違う気がする(あるいはシンセの音と同じく打ち込みだろうか)。
90年代半ばならDTMでもっとちゃんとした音が作れるだろう、と思うのだが。あえて何か安い楽器を試してみたのかもしれない。
'Calfskin Smack'
用語集によると、「感触(smack)というのが子牛革の手袋で顔をはたかれる感触のことではなんてことを言っている」(かなり意訳)。
'Rilkean Heart'
歌詞はJeff Buckleyに宛てたものだということが判明している。
前述のとおり、ジャケットでも「リルケの心を持つ友」としてBuckleyにメッセージを送っている。
歌詞は聞き取りやすい上にPVでも明らかにされているので、Webで簡単に探すことができる。前のアルバムが「自分探し」をひとつのテーマとしていたのに対し、この曲ではRilkean heartの人によって自分が自分を超越した何者かにしてくれる、といった歌。彼は自分を超越した何かに導いてくれるが、自分には至らないところもあり云々。そんな歌だと思う。カラオケにあれば歌いたい。
'Eperdu'
用語集によると、「古いフランス語で'lost'に相当する」とか。
ジャケットの折り返しの中にある以下の言葉はこの曲の歌詞の一部だと言われる。
adove day holding nest
both that sheltering and taking possession
hand outstretched
trembles its echo
まさか無停電電源装置の歌ではないと思うのだけど、そう思いだすと'Shut Down, Shut Down'と聞こえてくるような気もしてくる。
辞書を引いたらこんな意味も出てきた。
Underground Press Syndicate
地下出版シンジケート! かっこいい。
'Seekers Who Are Lovers'
'seeker'には色々な意味があるようだが、ここでは「求道者」という訳が一番しっくりくるようだ。曲名を大胆に訳すと「真言立川流」か。
音としてもかなり重厚だが、歌詞もキリストやバレンタインの名が出てかなり深刻に聞こえる。ラストにこんな重い曲がくるのは"Head Over Heels"以来だろう。
色々すごい歌詞だが、「You are a woman just as you are a man」というのが特に印象に残る。一見矛盾した表現。そして実は「あなたがまさに人間であるように、あなたは女である」というさほど訳すのが難しくない英語。でもその意味の深さにふと立ち止まらずにいられない。