Four-Calendar Café
- アーティスト: Cocteau Twins
- 出版社/メーカー: Universal UK
- 発売日: 2006/08/22
- メディア: CD
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曲目
原題
Four-Calendar Café
- Know Who You Are At Every Age
- Evangeline
- Bluebeard
- Theft, And Wandering Around Lost
- Oil Of Angels
- Squeeze-Wax
- My Truth
- Essence
- Summerhead
- Pur
解説
概要
1993年9月に発表されアルバム第7作。
このアルバムからアメリカのフォンタナ・レコードというレーベルから出されている。4ADからは1991年に離れたとのこと。
日本盤も日本フォノグラムから出るようになった。
前作に比べるとおとなしい印象。穏やかできれいな音の曲が多く、とても聴きやすい。
その中で9曲目の'Summerhead'だけは激しく個性的で際立っている。
この作品でバンドに大きい変化があったといえばElizabethのヴォーカル。歌詞がかなり聞き取りやすくなった。
その伝わりやすくなった言葉を追ってみると哲学的なものだったり心の傷にかかわるものだったり、今度は言葉の意味として深いものになっている。また、娘のLucyBelleについて歌った曲も複数ある。
この作品からクレジットにサポートメンバーの名前が記されるようになった。
Additional guitars: Ben Blakeman, Mitsuo Tate.
Additional engineering: Lincoln Fong.
なんとそのうちの一人は日本人!
Mitsuo Tateこと舘美津男氏。
氏は1990年からCocteau Twinsのサポートメンバーとしてアルバムやライブでの音造りに貢献してきたという。その人柄と演奏のテクニック、そしてその仕事ぶりにバンドのメンバーは賞賛を惜しまない。10年以上英国に住みCocteau Twinsのみならず多くの音楽にかかわってきた。現在は日本に戻っているとのこと。とはいえ、活躍の場は現在も世界各地に広がっている。
アルバムのタイトルについてはwikipediaに解説がある。
In his travelogue Blue Highways: A Journey Into America, William Least Heat-Moon outlines an "Infallible way to find honest food at just prices" in the United States, based upon the number of calendars on a café wall. A four-calendar café is not at the top of the scale, but is one away.[1]
http://en.wikipedia.org/wiki/Four-Calendar_Caf%C3%A9
要するにWilliam Least Heat-Moon氏がアメリカの旅行記で、カフェの壁にかかったカレンダーの数が適正価格でちゃんとした食事の出る店を見分ける方法だと書いていると。そして、「カレンダー4冊のカフェ」は最上のものではないものの、けっこうなものではあるという。
アメリカに行ったことないので向こうのカフェに本当にカレンダーがかかっているかどうかはよく分からない。そういえば日本でもそこらの定食屋に行くとカレンダーはかかっているか。ただし4冊もかかっているのはそうそうないと思う。
アメリカならチェーン店が発達してるからそれを選べばハズレはないかもしれない。今ならむしろまともな寿司屋を見分ける方法が必要なんじゃないだろうか。日本食が懐かしくてうっかりSushiレストランに入ったら大変だ。
各曲紹介
'Know Who You Are At Every Age'
ドラムと、不思議な響きのギターで始まる1曲目。けだるいギターにLizのヴォーカルが重なる。歌詞的にはアルバム早々から哲学的な問題を突きつけられる。
タイトルはこれだけだと意味不明だが、次の曲'Evangeline'の歌詞の冒頭部分から取り出した言葉。
Sorrow for letting someone else define you
Know who you are at every age
What impression am I making?
I see me as other people see me
主語にyouが入って節をなしている。これなら意味は分かる。
'Evangeline'
Evangelineは女性の名前。
広辞苑を当たってみると:
ロングフェロー【Henry Wadsworth Longfellow】
アメリカの詩人。作風は平明・流麗。「人生讃歌」「エヴァンジェリン」「ハイアワーサの歌」などの作のほか、ダンテ「神曲」の訳詩が有名。(1807〜1882)
wikipediaではこちら;
http://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Longfellow
"Evangeline"は1847年の作品とのこと。
http://en.wikipedia.org/wiki/Evangeline
自分自身を客観的に見ることができるのか、というか自分とは何であるのか、といったことを歌っているような印象を、歌詞をざっと読んで感じた(ロングフェローの作品の内容は不勉強のため知らない)。
タイトルはペローの童話の人物。「六人も妻を殺す青髯の男」(広辞苑より)。
本は容易に買えるし、青空文庫でDLして読める。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001134/files/43117_21536.html
Are you the right man for me?
Are you safe? Are you my friend?
こういった歌詞で「あなたは友達?」とあるがこれは恋人に対するもの。英語のfriendは「恋人」を包含するらしい。あなたは私にとって信頼できる味方(friend)か、それとも毒であり秘密を売り渡す人なのか、といった問いかけがなされている。
'Theft, And Wandering Around Lost'
「これは私の身体が言ったことなの? 〜私を打ち負かして」、「現実という刃で、私自身を切り刻みながら」といった物悲しい歌詞が印象的。Simonの不思議なベースも心に残る。
歌詞としては犯罪被害あるいは性的虐待といったものがテーマらしい。とても重い。しかし曲はとても美しい。
'Oil Of Angels'
用語集によると'oil of angels'は スラングで「"お金の贈り物"」や「"賄賂"」という意味らしい。
'Squeeze-Wax'
頻出する'Lucy'はRobinとLizの娘のLucyBelleのこと。
用語集によると'Squeeze-Wax'とはスラングで「(蝋で)封印する人」、転じて「担保」という 意味もあるらしい。また、「別のものに自分自身を結び付ける人」という 意味もあるとか。
歌詞はよく分からないけどLucyのことが沢山出るので、タイトルは思いっきり意訳して「絆」がいいのかもしれない。
'My Truth'
'The truth is not perfect'というフレーズが大変気に入っている。
「真実」という言葉を厳密に捉えればこれは意味的に矛盾しているのかもしれない。しかし、完全なる真実があったとして、それを受け止める人間の側に限界がある以上、やはり真実は完全なものとはなりえないのだろう。
ヴォーカルとキーボードの絡みが穏やかな感じでいい。
'Essence'
次の曲の激しさを盛り上げるがごとく、静かな曲がひと時流れる。
'Summerhead'
アクの強いイントロとメロディ、そして力強い歌い方でひときわ異彩を放っている。
特に印象的なフレーズが"I want be just what I am"。「自分がまさにそうであるようになりたい」。
ある意味1曲目の"Cry, cry, cry 'til you know why, I lost myself, identify"と対をなしているような気がする。
こういった自分が何者であるか、何者になりたいか、何者であるべきか、そんなことがこのアルバムを通したテーマの一つになっていると思う。
用語集によると Summerheadとは「スラングで傘や日傘のこと」らしい。
'Pur'
この曲はストレートにLucyBelleへの愛を歌っている。ちょうど2〜3歳だろうか。確かに可愛くてしかたない頃だろう。
purは辞書を引いたらpurrの古語らしい。意味は猫が喉を鳴らすようなことを指すこと。purrrrrrrって擬音がそのまま言葉になったに違いない。